歌舞伎に携わる演奏家名鑑-思い出の名演奏家たち

歌舞伎に携わる演奏家名鑑-思い出の名演奏家たち 【別冊】「歌舞伎音楽「きがく」復刻版」

趣旨と内容

慶長8(1603)年以来、400年以上にわたる歌舞伎の歴史の中で、昭和14(1939)年から始まった日中戦争とそれに続く太平洋戦争の時代は、かつてない苦難の連続でした。しかし、そんな時代にあっても、名優たちと名演奏家たちの輝かしい舞台はあり、戦時下の国民を魅了し、慰め、力づけてきました。
本書は、戦時下から、日本全土が焦土と化した敗戦によって伝統文化が危機的状況に直面する中で、歌舞伎の技芸の継承と創造発展に情熱を傾け、大きな貢献をした名演奏家の方々の事跡と、時代の流れの中での歌舞伎音楽の動向、個々の名演奏家たちの功績を明らかにしようとの意図のもとに行った調査の報告書です。
調査のポイントは、個々の演奏家の基本的データとともに、各々の演奏家の歌舞伎興行や舞台における功績、芸風、人となりやエピソードなどを、できる限り活き活きと描くことに注力しました。また、人選にあたっては舞台で活躍した演奏家のみならず、黒御簾などで活躍した演奏家たちにも配慮しました。
そのために、当時の歌舞伎と演奏家の動向を記憶する俳優や演奏家、研究家の方々にインタビューを行い、表から観ただけでは窺えない歌舞伎の現場の動向を把握することに努めました。
歌舞伎は音楽の要素がとても大きい舞台芸術ですが、戦後に数多発行された演劇雑誌などを博捜しても、俳優に関する記事に比して、演奏家に関する記事はまことに乏しいのが実情です。そうした中で進めた今回の調査は、まだ充分とは言えませんが、今後のさらなる研究のための一つの道標としてご覧いただき、ご意見、ご批判、ご教示を頂きたいと存じます。

掲載した演奏家の人数と、その一例

【竹本】浄瑠璃20名、三味線方20名
(竹本扇太夫、竹本鏡太夫、竹本雛太夫、竹本米太夫、豊竹岡太夫、豊竹寿太夫、竹澤仲造、豊澤瑩緑、豊澤重松、野澤市造、野澤松三郎、など)、
【長唄】唄方21名、三味線方24名
(2代目柏庄太郎、杵屋胡金吾、14代目杵屋六左衛門、中村美秋、6代目冨士田音蔵、4代目松島庄三郎、4代目松島庄十郎、4代目松永和風、7代目芳村伊十郎、芳村五郎治、3代目杵屋栄蔵、4代目杵屋佐吉、杵屋栄二、杵屋栄左衛門、3代目杵屋五三郎、杵屋富造、稀音家政吉次、玉村秀三郎、5代目松島寿三郎など)
【鳴物】45名
(梅屋勝之輔、梅屋三次郎、初代田中涼月、11代目田中傳左衛門、10代目望月太左衛門、鳳聲晴郷、4代目望月朴清など)
【常磐津】浄瑠璃9名、三味線方12名
(常磐津一巴太夫、常磐津勘寿太夫、常磐津千東勢太夫、常磐津千勢太夫、常磐津三東勢太夫、初代常磐津菊三郎、常磐津文字翁、など)
【清元】浄瑠璃8名、三味線方7名
(清元志寿太夫、清元寿國太夫、清元栄寿郎、清元寿兵衛、清元一寿郎、清元栄三郎、など)
【新内】1名
(鶴賀朝太夫)
【三曲】10名
(川瀬白秋、中島雅楽之都、中能島欣一、平井澄子、星田一山、前田白秋、唯是晨一、初代山本邦山、など)

目次

Ⅰ.竹本
「竹本の人々-戦前から現在まで」神山 彰
 名鑑 竹本葵太夫
Ⅱ.長唄
「近代歌舞伎と歌舞伎囃子方(長唄)の歩み」浅原恒男
「昭和の歌舞伎長唄名舞台【競演録】」秋山勝彦
 名鑑 石橋健一郎、神山 彰、橋本芳孝
Ⅲ.鳴物
「鳴物概説」石橋健一郎
「「鳴物」は「生物」に通じる」織田紘二
 名鑑 織田紘二
Ⅳ.常磐津
「常磐津掌史」鈴木英一
 名鑑 鈴木英一
Ⅴ.清元
「清元節-その歴史と特色」岡崎哲也
 名鑑 岡崎哲也
Ⅵ.新内
「新内 概説」岡崎哲也
 名鑑 岡崎哲也
Ⅶ.三曲
「三曲 概説」岡崎哲也
 名鑑 岡崎哲也
Ⅷ.付録
「聞き書き 鳥羽屋里長/杵屋淨貢」(聞き手)竹本葵太夫
「聞き書き 清元榮志太夫」(聞き手)竹本葵太夫
 人名索引
 執筆者プロフィール

【別冊】歌舞伎音楽「きがく」復刻版
「きがく」(「歌舞伎音楽 きがく」)は芳村五郎治が1970年に歌舞伎座の邦楽部長に就任したあと、1973年6月に社中の演奏家で構成された伎楽会から創刊された会報です。その内容は五郎治はじめ杵屋栄二、杵屋栄左衛門など、歌舞伎専従の錚々たる演奏家たちのエッセイや黒御簾音楽についての論考、俳優や他ジャンルの演奏家、狂言作者、演出家からの寄稿、聞き書などがあり、歌舞伎音楽の研究上も重要かつ貴重なものです。しかし発行部数も配布先も限られ、所蔵者も少なく、一部の関係者以外には存在すら知られていません。今回、第二次世界大戦以後の歌舞伎の復興と継承発展に寄与した演奏家たちの事跡をまとめるに際し、是非とも復刻して広く後世に伝えるべき資料として、創刊号から2000年(平成12年)の第42号までの全巻を復刻しました。

調査編集スタッフ

監修 浅原恒男
構成・編集・執筆 鈴木英一
執筆(50音順)秋山勝彦、石橋健一郎、岡崎哲也、織田紘二、神山彰、竹本葵太夫、橋本芳孝

編集・発行
一般社団法人 伝統歌舞伎保存会
助成
文化庁
協力
松竹株式会社/公益社団法人 日本俳優協会/独立行政法人 日本芸術文化振興会
写真提供
松竹株式会社
資料提供
独立行政法人 日本芸術文化振興会/公益財団法人 松竹大谷図書館/京都市立芸術大学、東京文化財研究所
発行
2020年3月31日
サイズ
箱21.5cm×15cm×5.5cm/思い出の名演奏家たち375頁/別冊 歌舞伎音楽きがく復刻版

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