伝統歌舞伎保存会について

事業と財務

平成28年度 事業報告
 
平成28年度 事業計画
  【平成29年度正味財産増減予算書】

平成28年度 事業報告

(平成28年4月1日~平成29年3月31日)

【I】歌舞伎の技芸の研修と伝承者養成

(1) 新人研修(国立劇場の養成事業)

日本芸術文化振興会(国立劇場)との協同事業として講師派遣などを行った。
平成28年度に実施した研修
・第22期歌舞伎俳優研修 2年目(2年間)
・第22期歌舞伎音楽(竹本)研修 2年目(2年間)
・第15期歌舞伎音楽(鳴物)研修 2年目(2年間)
・第7期歌舞伎音楽(長唄)研修 1年目(3年間)
保存会は、国立劇場養成課と連携して、役員によるレクチャーを含め、カリキュラムの内容の充実を進めた。
上記のうち、第22期歌舞伎俳優研修、第22期歌舞伎音楽(竹本)研修、第15期歌舞伎音楽(鳴物)研修は平成29年3月に2年間の研修を修了し、研修生は各々師匠に入門した。国立劇場は引き続き、第23期歌舞伎俳優研修、第23期歌舞伎音楽(竹本)研修、第7期歌舞伎音楽(鳴物)研修生を募集し、選考試験を実施するため、本法人からも審査員を派遣した。

(2) 伝承者養成事業(既成俳優の研修事業)

当年度は歌舞伎公演が増えたため、既成者研修を実施する機会を設けることができなった。来年度の課題とする。

(3) 稽古費用等補助

名題および名題下俳優を対象に、各自が自主的に参加する日本舞踊と歌舞伎音楽(長唄、鳴物、竹本、常磐津、清元ほか)の稽古費用の一部を研修手当として補助した。延べ33名、支給総額は175万6千3百円であった。

(4) 研修発表会の開催

第18回伝統歌舞伎保存会研修発表会(平成28年10月22日 国立劇場大劇場)
 担当理事:中村梅玉専務理事・松本幸四郎理事
 「仮名手本忠臣蔵」二段目・三段目・「お楽しみ座談会」

第19回伝統歌舞伎保存会研修発表会(平成29年 1月22日 国立劇場大劇場)
 担当理事:尾上菊五郎副会長
 「義経千本桜」すし屋・「お楽しみ大喜利」

上記の研修を行い、その成果を見せる発表会を2回開催した。

(5) 研修発表公演、勉強会への協賛

日本芸術文化振興会(国立劇場)が主催する研修発表公演「第22回 稚魚の会・歌舞伎会合同公演」(8/17~21)、「第18回 音の会」(8/12~13)、「第26回 上方歌舞伎会」(8/24~25)に協賛した。

【II】技術研究(調査研究)

会員(歌舞伎俳優)のプロフィール(芸歴、実績など)のデータ管理システムの改修を行った。また、平成27年度に引き続き、歌舞伎に不可欠な音楽(竹本、長唄、鳴物、常磐津、清元、新内、三曲)の演奏家の調査を行い、『平成二十八年版 歌舞伎に携わる演奏家名鑑』を編集し、平成29年2月22日に刊行、関係各方面に配布した。

【III】資料収集整理(記録作成と保存)

平成27年度に故・竹本鏡太夫師の床本310冊をデジタル化したのに引き続き、公益財団法人松竹大谷図書館所蔵の故・豊竹寿太夫師の床本279冊のデジタル化を実施した。
豊竹寿太夫師(明治37年(1904年)~昭和51年(1976年))は義太夫狂言の上演に必須の竹本の太夫として、主に大阪、京都などで上方歌舞伎の床(竹本)を担当し、大きな実績を残した。
床本は、義太夫狂言を上演する際に太夫が自筆で作成する重要な資料であり、これまでも竹本演奏家が技術研究のために原本を直接閲覧していた。しかし原本の閲覧は経年劣化や破損の恐れがあり、また地方公演などに出演中の場合には閲覧が不可能であった。そこで本法人が大谷図書館の協力を得て、資料収集事業として全巻の全頁をデジタル画像化した。デジタル化した画像は、最高の画質のデータを大谷図書館で保管するとともに、利用しやすいDVD形式のデータを本法人で預かり、竹本演奏家や研究者の利用に供することとなる。

【IV】普及事業

(1) 「小学生のための歌舞伎体験教室」

対象は、公募による首都圏の小学生(4、5、6年生)希望者。プログラムは、参加児童が歌舞伎の楽しさと伝統芸術としての魅力を体験できるものとした。

  1. 「体験教室」ガイダンスと浴衣の着付け、立ち居振る舞いのお稽古(7/3)
  2. 国立劇場の七月歌舞伎鑑賞教室公演「卅三間堂棟由来」を観劇したあと、国立劇場の舞台機構の体験(7/9)
  3. 江戸東京博物館ホールで「歌舞伎ワークショップ」開催(8/2)
  4. 国立劇場の稽古場で歌舞伎の実技と歌舞伎音楽の楽器などの体験(8/3~8/7)
  5. 「寿曽我対面」の舞台稽古と発表会(8/8~8/9)

以上の事業は(独)日本芸術文化振興会、松竹株式会社、(公社)日本俳優協会の協力を得て、文化庁「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」の委託事業として行った。

(2) 『かぶき手帖2017年版』の刊行

平成29年1月2日付で、公益社団法人日本俳優協会、松竹株式会社との共同事業として、『かぶき手帖2017年版』を刊行した。

(3) 伝統歌舞伎保存会ホームページのリニューアル

歌舞伎の技芸の継承のための本保存会の活動をひろく一般に広報するためのコンテンツの充実と、当法人の情報公開などのために、ホームページの充実につとめた。

平成29年度 事業計画

(平成29年4月1日~平成30年3月31日)

【基本方針】

本保存会が一般社団法人へ移行してからの定款に定められた事業は、以下の通り。

第4条 この法人は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。

  1. 伝承者の養成に関する事業。
  2. 伝統的な歌舞伎の技芸の研修及び研究会、発表会等の開催に関する事業。
  3. 伝統的な歌舞伎に関する調査研究と記録作成及びその成果の公表に関する事業。
  4. 伝統的な歌舞伎に関する資料の収集整理に関する事業。
  5. 伝統的な歌舞伎を普及させるための事業。
  6. その他この法人の目的を達成するために必要な事業。

上記の定款に則して、今年度に実施する具体的な事業は以下の通り。

(1) 伝承者の養成に関する事業。

日本芸術文化振興会(国立劇場)との共同事業として、新たに第23期歌舞伎俳優研修、第23期歌舞伎音楽(竹本)研修、第16期歌舞伎音楽(鳴物)研修が開始される。また、第7期歌舞伎音楽(長唄)研修が2年目を迎える。これらの研修に講師派遣を行う。

(2) 伝統的な歌舞伎の技芸の研修及び研究会、発表会等の開催に関する事業。

伝承者養成事業(既成俳優の研修事業)については、従来通り、次の4種類とする。

  1. 長唄(唄・三味線)、鳴物(囃子)、竹本(義太夫語り)
  2. 日本舞踊
  3. 歌舞伎の演技、せりふ術、芸話、講義
  4. 立廻り

また、名題下俳優が自主的に行う日本舞踊や歌舞伎音楽の稽古に対して、補助金を出すことで伝承者の技芸の充実をはかる。
研修発表会の開催については、国立劇場で、歌舞伎公演の合間に研修を行い、その成果を発表する「研修発表会」を年2回程度、開催する。研修課題の演目と配役等は、実施月の劇場出演理事を中心に、委員会方式で決定する。

(3) 伝統的な歌舞伎に関する調査研究と記録作成及びその成果の公表に関する事業。

本保存会が、昭和40年(1965年)に発足したときの第1次認定会員から現在の第14次認定会員にいたるまでの全会員の基本データ、芸歴・職歴等のデータベース・システムを活用し、歌舞伎音楽(竹本、長唄、鳴物)の会員のプロフィールなどを、個人情報に触れない範囲で、本保存会のホームページ上に公開する。
歌舞伎公演の舞台写真のデジタル化と公開については、昨年度に引き続き、石井雅子氏舞台記録写真データベースをインターネット公式サイト「歌舞伎on the web」で公開する。閲覧者は本保存会理事と会員、および関係者(登録制)とする。
また、戦後の歌舞伎界で活躍した写真家・吉田千秋氏(1918年- 2007年)が1950年から撮り始め、1951年の歌舞伎座再開場後、毎月撮影した歌舞伎座などの歌舞伎公演の舞台写真のネガフィルムが未整理のまま保管されている。その整理と、歌舞伎の伝承のためのデジタルデータのためのスキャニングの可能性について、調査研究を行う。

(4) 伝統的な歌舞伎に関する資料の収集整理に関する事業。

本保存会は、平成22年に『歌舞伎音楽演奏家名鑑-昭和二十年から現代まで』を刊行した。この報告書では、現役演奏家と物故演奏家が混在していたが、現役演奏家については平成28年度により詳しい『歌舞伎に携わる演奏家名鑑-平成28年版』を刊行している。それに比して、物故演奏家で歌舞伎の伝承に大きな貢献をした演奏家については、十分な資料が揃っているとは言いがたい。そこで、戦後から現在までに歌舞伎公演で重要な役割を果たした演奏家と、歌舞伎の技芸の保存継承に大きな貢献をした演奏家について、より具体的な功績とプロフィールを調査し、『戦後歌舞伎の名演奏家たち』(仮称)として刊行するための調査にとりかかることとする。

(5) 伝統的な歌舞伎を普及させるための事業。

文化庁の「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」の一事業として、文化庁から委託を受け、「小学生のための歌舞伎体験教室」を今年度も実施する。
対象は、公募による首都圏の小学生(4,5,6年生)希望者とする。プログラムは、参加児童が、歌舞伎の楽しさと伝統芸術としての魅力を体験できるよう、従来の内容を見直しつつ考案する。
具体内容は、(1)国立劇場大劇場での「歌舞伎鑑賞教室」公演の観劇と舞台機構の体験、(2)江戸東京博物館ホールで開催する歌舞伎ワークショップ、(3)それに続く「体験教室」では、国立劇場の稽古場を利用して日本の伝統的な音楽や楽器にふれる等のプログラムと併行して歌舞伎実技の体験などを行い、最後に国立劇場小劇場で発表会を行う。(独)日本芸術文化振興会(国立劇場)、松竹株式会社、(公社)日本俳優協会の協力を要請。

(6) 「かぶき手帖」2018年版の刊行

『かぶき手帖2018年版』の刊行については、(公社)日本俳優協会、松竹株式会社との共同出版事業として、平成30年1月2日発行とする。