伝統歌舞伎保存会について

事業と財務

令和4年度 事業報告
 
令和5年度 事業計画
  【2023年度正味財産増減予算書】

I.令和4(2022)年度 事業報告

(令和4年4月1日~令和5年3月31日)

【I】歌舞伎の技芸の研修と伝承者養成

(1) 新人研修(国立劇場の養成事業)

日本芸術文化振興会(国立劇場)との協同事業として講師派遣などを行った。

2022年度に実施された歌舞伎関係の養成研修
・第26期 歌舞伎俳優研修 2023年3月に1名研修修了
・第27期 歌舞伎俳優研修 1年目(2年間) 1名研修中
・第9期 歌舞伎音楽(長唄)研修 1年目(3年間)1名研修中
・第25期歌舞伎音楽(竹本)研修 1年目(2年間) 3名研修修了
保存会は、国立劇場養成課と連携して、役員によるレクチャーを含め、カリキュラムの内容の充実を進めた。
また、令和5年度から開講する第28期歌舞伎俳優研修、第26期歌舞伎音楽(竹本)研修、第10期生歌舞伎音楽(長唄)研修、第18期歌舞伎音楽(鳴物)研修の応募者の選考試験に協力した。

(2) 伝承者養成事業(既成俳優の研修事業)

コロナウイルス感染拡大防止の規制があり、従来の既成者研修をまだ行うことができなかった。そのかわり、都立光明学園からの依頼により、同校の肢体不自由児童のためにワークショップを行うため、事前に日本舞踊の既成者研修を行った。

(3) 稽古費用等補助

名題および名題下俳優を対象に、各自が自主的に参加する日本舞踊と歌舞伎音楽(長唄、鳴物、竹本、常磐津、清元ほか)の稽古費用の一部を研修手当として補助した。
申請は37名、支給総額は2,376,850円であった。

(4) 研修発表会の開催

第26回伝統歌舞伎保存会研修発表を、10月24日(月)国立劇場大劇場にて開催した。演目は「義経千本桜-伏見稲荷鳥居前の場」。第27回研修発表会を、11月23日(祝・水)国立劇場大劇場にて開催。演目は「仮名手本忠臣蔵・五段目」。
いずれも関係者と寄付金者のみを招待して開催した。

(5) 研修発表公演、勉強会への協賛

日本芸術文化振興会(国立劇場)が主催する研修発表公演「第28回 稚魚の会・歌舞伎会合同公演」(8/12~16)と「第24回 音の会」(8/6~7)、「第32回 上方歌舞伎会」(8/24~25)に協賛した。

【II】資料収集整理(記録作成と保存)

令和4年に休刊した歌舞伎専門月刊誌「演劇界」に代わり、その巻末に掲載されていた貴重な資料である各劇場の歌舞伎上演記録を継承すべく毎月収集整理し、舞台写真とともに一年間の成果として出版し、俳優・演奏家・関係者・研究者に資料として供するため、2022(令和4)年1月~12月までに国内の主要劇場(歌舞伎座・新橋演舞場・国立劇場・御園座・京都南座・大阪松竹座・博多座・地方公演・巡業等)で上演された歌舞伎の本公演・勉強会・地方公演などで日本俳優協会所属の歌舞伎俳優が出演した公演について、筋書・チラシを基に月毎に公演名・演目・配役等のデータと主な舞台の公演記録写真を掲載した『歌舞伎年鑑 上演資料集2022』を刊行した。非売品。200部を関係方面に無料で配布した。

【III】普及事業

(1) 「小学生のための歌舞伎体験教室」

コロナウイルス感染拡大防止の対策を講じた上で、7月23日から28日まで実施した。
  23日に国立劇場大稽古場で開講式を開催し、鬘と衣裳のワークショップを実施。24日には歌舞伎音楽(鳴物)の体験、25日は歌舞伎音楽(長唄三味線)の体験、26日は立廻りの体験を行い、併せて『盲長屋梅加賀鳶』の「勢揃い」の演技とせりふを稽古し、27日に国立劇場小劇場で舞台稽古、そして28日に発表会を開催した。

(2) 『かぶき手帖2023年版』を刊行した。

2023年版は令和5年1月2日付の発行となった。公益社団法人日本俳優協会、松竹株式会社との共同事業である。

II.事業報告の附属明細書

特に記載する事項は無い。

令和5(2023)年度事業計画書

(2023年4月1日~2024年3月31日)

【基本方針】

本保存会の定款に定められた事業は、以下の通り。

第4条 この法人は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。

  1. 伝承者の養成に関する事業。
  2. 伝統的な歌舞伎の技芸の研修及び研究会、発表会等の開催に関する事業。
  3. 伝統的な歌舞伎に関する調査研究と記録作成及びその成果の公表に関する事業。
  4. 伝統的な歌舞伎に関する資料の収集整理に関する事業。
  5. 伝統的な歌舞伎を普及させるための事業。
  6. その他この法人の目的を達成するために必要な事業。

不完全ながら新型コロナウイルスへの対応が見直され日常の生活がもどりつつある。まだコロナ対策を行いつつ、上記の定款に則して、今年度に実施が可能な範囲で、以下の通り事業を行う。

(1) 伝承者の養成に関する事業

日本芸術文化振興会(国立劇場)との共同事業として、
・第27期歌舞伎俳優研修(2年目)  令和6年3月修了予定
・第28期歌舞伎俳優研修(1年目)令和5年4月~
・第9期歌舞伎音楽(長唄)研修(2年目)令和4年4月~
・第25期歌舞伎音楽(竹本)研修(2年目)令和4年4月~
・第18期歌舞伎音楽(鳴物)研修(2年目)令和4年4月~
以上の研修に講師派遣を行う。

(2) 伝統的な歌舞伎の技芸の研修及び研究会、発表会等の開催に関する事業

伝承者養成事業(既成俳優の研修事業)については、従来通り、次の4種類とする。

  1. 長唄(唄・三味線)、鳴物(囃子)、竹本(義太夫語り)
  2. 日本舞踊
  3. 歌舞伎の演技、せりふ術、芸話、講義
  4. 立廻り

また、名題および名題下俳優が自主的に行う日本舞踊や歌舞伎音楽の稽古に対して、補助金を出すことで伝承者の技芸の充実をはかる。
昨年同様、令和5年度も、可能であれば国立劇場などの歌舞伎公演の合間に研修を行い、その成果を発表する「研修発表会」を年1~2回程度開催する。研修課題の演目と配役等は実施月の劇場出演理事を中心に決定する。

(3) 伝統的な歌舞伎に関する調査研究と記録作成及びその成果の公表に関する事業

昨年休刊した歌舞伎専門月刊誌「演劇界」に代わり、その巻末に掲載されていた貴重な資料である各劇場の上演記録を毎月収集整理し、一年間分を舞台写真とともに報告書として出版し、俳優、演奏家、関係者、研究者に資料として供する。

(4) 伝統的な歌舞伎を普及させるための事業

毎年の夏休みに実施してきた「小学生のための歌舞伎体験教室」を、今夏のコロナ禍の状況をみながら実施する方向で準備を進める。
対象は、公募による首都圏の小学生(4,5,6年生)希望者とし、プログラムは参加児童が歌舞伎の楽しさと伝統芸術としての魅力を体験できるよう、従来の内容を継承しながら、一部見直して作成する。具体内容は、国立劇場の大稽古場などを借りての結髪の見学や義太夫の体験、立廻りにふれる等のプログラムと並行して、『盲長屋梅加賀鳶-木戸前』の本読みから実技までの体験を行い、最後日に国立劇場小劇場で発表会を行う。
(独)日本芸術文化振興会(国立劇場)の協賛、松竹株式会社と(公社)日本俳優協会の協力を要請する。

(5) 「かぶき手帖」2024年版の刊行

『かぶき手帖』2024年版を、日本俳優協会、松竹(株)との共同出版事業として、2024年1月2日発行をめざして準備を進める。