伝統歌舞伎保存会について

事業と財務

令和2年度 事業報告
 
令和3年度 事業計画
  【2021年度正味財産増減予算書】

I.令和2(2020)年度 事業報告

(令和2年4月1日~令和3年3月31日)

【I】歌舞伎の技芸の研修と伝承者養成

(1) 新人研修(国立劇場の養成事業)

日本芸術文化振興会(国立劇場)との協同事業として講師派遣などを行った。
2020年度に実施された歌舞伎関係の養成研修
・第24期 歌舞伎俳優研修 2年目(2年間) 2021年3月に4名研修修了
・第8期 歌舞伎音楽(長唄)研修 2年目(3年間) 1名研修中
・第17期歌舞伎音楽(鳴物)研修 1年目(2年間) 1名研修中
・第24期歌舞伎音楽(竹本)研修 1年目(2年間) 1名研修中
保存会は、国立劇場養成課と連携して、役員によるレクチャーを含め、カリキュラムの内容の充実を進めた。
また、これまで隔年に行っていた歌舞伎俳優研修生募集が毎年募集になり、第26期生の応募者の選考試験に協力した。

(2) 伝承者養成事業(既成俳優の研修事業)

例年の既成者研修はコロナウイルス感染拡大防止のために実施できなかったが、コロナウイルスによる緊急事態宣言で本公演ができなかった自粛期間中に、技芸の研鑽のために自宅などで個人が行った自主研修と、その指導に対し、研修費及び研修指導謝金を支給した。申請者には所定の申請書と証拠になる動画、写真、レポートなどを提出してもらった。
 指導謝金は、24名に対して 総額1,822,000円
 研修手当は、55名に対して 総額3,927,000円
 (合計) 5,749,000円

(3) 稽古費用等補助

名題および名題下俳優を対象に、各自が自主的に参加する日本舞踊と歌舞伎音楽(長唄、鳴物、竹本、常磐津、清元ほか)の稽古費用の一部を研修手当として補助した。
申請は39名、支給総額は2,222,000円であった。

(4) 研修発表会の開催

毎年、国立劇場(大劇場)で開催してきた伝統歌舞伎保存会研修発表会はコロナウイルス感染拡大防止のために開催できなかったので、その代わりに9月以降、令和2年1月まで、毎月、国立劇場大稽古場を会場として、無観客で〈あげ浚い〉を実施した。
また、12月に京都南座の千穐楽の翌日に南座の舞台を借りて、関西在住の会員を中心に〈あげ浚い〉を実施した。
参加者には事前に体温測定、体調管理をお願いし、会場を消毒した上で、手指の消毒とマスク、フェイス・シールド着用で「附立」「総浚い」という形で行った。基本的に楽屋を使用せず、化粧なしで、役により衣裳と小道具を使い、素で行った。
演目により、竹本連中、黒御簾の唄、三味線、鳴物と附打、狂言作者も参加。
本公演の出演者には遠慮いただき、休演中の方を中心に、多くの会員に参加いただいた。
指導陣と出演者、お手伝いを含めて、参加者全員に、下記の通り研修手当を支給した。
 (指導俳優)延べ136人 16,676,000円
 (研修俳優)延べ120人 8,502,000円
 (演奏家) 4,895,000円
 (狂言作者・附打) 726,000円
 (衣裳) 869,000円
 (小道具)  1,617,000円
 (楽器) 399,300円
 (会場費) 602,640円
 (合計) 34,286,940円

(5) 研修発表公演、勉強会への協賛

日本芸術文化振興会(国立劇場)が主催する研修発表公演「第26回 稚魚の会・歌舞伎会合同公演」(8/15~19)と「第22回 音の会」(8/22・23)に協賛した。
※「第30回 上方歌舞伎会」(8/24~25予定)は公演中止になった。

【II】資料収集整理(記録作成と保存)

現役で活躍している歌舞伎俳優300名のプロフィールと舞台写真を掲載した『歌舞伎俳優名鑑』のための資料調査、原稿の執筆と編集を行い、刊行した。非売品。400部を掲載者と関係者に無料で配布した。

【III】普及事業

(1) 「小学生のための歌舞伎体験教室」

コロナウイルス感染拡大防止のために実施を見送った。

(2) 『かぶき手帖2020年版』を刊行した。

令和2年版は5月1日付の発行となった。公益社団法人日本俳優協会、松竹株式会社との共同事業である。

(3) YouTube公式チャンネル「歌舞伎ましょう」を開設した。

コロナウイルス感染拡大防止のため歌舞伎公演が自粛で中止になったため、歌舞伎ファンや一般の人たちに向けて歌舞伎の魅力を伝えるため、公益社団法人日本俳優協会と共同でYouTube公式チャンネル「歌舞伎ましょう」を開設し、俳優や音楽演奏家が自宅などで行った自主研修のトンボや立廻り、化粧、せりふや演技の稽古などの動画を制作し無料で公開した。

(4) 伝統歌舞伎保存会ホームページのリニューアル

歌舞伎の技芸の継承のための本保存会の活動をひろく一般に広報するためのコンテンツの充実と、当法人の情報公開などのために、ホームページの充実につとめた。

II.事業報告の附属明細書

特に記載する事項は無い。

令和3(2021)年度事業計画書

(2021年4月1日~2022年3月31日)

【基本方針】

本保存会の定款に定められた事業は、以下の通り。

第4条 この法人は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。

  1. 伝承者の養成に関する事業。
  2. 伝統的な歌舞伎の技芸の研修及び研究会、発表会等の開催に関する事業。
  3. 伝統的な歌舞伎に関する調査研究と記録作成及びその成果の公表に関する事業。
  4. 伝統的な歌舞伎に関する資料の収集整理に関する事業。
  5. 伝統的な歌舞伎を普及させるための事業。
  6. その他この法人の目的を達成するために必要な事業。

昨年からの新型コロナウイルスの流行にまだ収束の見通しが立っていないが、それを踏まえた上で、上記の定款に則して、今年度に実施が可能な範囲で、対策を講じた上で、以下の通り事業を行う。

(1) 伝承者の養成に関する事業

日本芸術文化振興会(国立劇場)との共同事業として、
・第26期歌舞伎俳優研修(1年目)
・第8期歌舞伎音楽(長唄)研修(3年目。現在1名)令和4年3月修了予定
・第24期歌舞伎音楽(竹本)研修(2年目。現在1名)令和4年3月修了予定
・第17期歌舞伎音楽(鳴物)研修(2年目。現在1名)令和4年3月修了予定
以上の研修に講師派遣を行う。

(2) 伝統的な歌舞伎の技芸の研修及び研究会、発表会等の開催に関する事業

伝承者養成事業(既成俳優の研修事業)については、従来通り、次の4種類とする。

  1. 長唄(唄・三味線)、鳴物(囃子)、竹本(義太夫語り)
  2. 日本舞踊
  3. 歌舞伎の演技、せりふ術、芸話、講義
  4. 立廻り

また、名題および名題下俳優が自主的に行う日本舞踊や歌舞伎音楽の稽古に対して、補助金を出すことで伝承者の技芸の充実をはかる。
国立劇場などの歌舞伎公演の合間に研修を行い、その成果を発表する「研修発表会」を年1~2回程度開催する。研修課題の演目と配役等は実施月の劇場出演理事を中心に決定する。

(3) 伝統的な歌舞伎に関する調査研究と記録作成及びその成果の公表に関する事業

  1. 歌舞伎音楽(竹本、長唄、鳴物、常磐津、清元、新内、三曲)の演奏家で、現在、歌舞伎公演に出演する演奏家の具体的な功績とプロフィールの調査は、『平成28年版 歌舞伎に携わる演奏家名鑑』を刊行した後、5年を経たので、最新のデータを調査更新して『歌舞伎に携わる演奏家名鑑』として刊行する準備をすすめる。
  2. 昭和20年以降に活躍した歌舞伎俳優を調査してその結果をまとめた『戦後歌舞伎の名優たち』を平成20年(2008年)刊行したが、すでに13年を経ているので、それ以降に亡くなった俳優のプロフィールと芸歴等を調査し、併せて平成20年版のデータの補足修正を行い、増補改訂版として刊行する。
  3. 歌舞伎研究家で復活狂言の補綴演出などにも尽力された郡司正勝氏が亡くなられて22年経たが、このたび氏が生前に心血を注いで収集し注釈を入れた「芝居唄」の原稿が発見された。これは歌舞伎の下座(黒御簾)で唄われる歌(唄)の詞章を収集し、解説と注釈を施したもので、杵屋栄左衛門著『歌舞伎下座音楽集成』をはじめ、『日本戯曲全集』歌舞伎篇全50巻、『黙阿弥全集』全20巻、『鶴屋南北全集』全12巻などの脚本集や、国立劇場、早稲田大学演劇博物館所蔵の附帳まで博捜してまとめたものである。この貴重な遺稿を、郡司正勝氏のご遺族のご了承を得て、資料収集事業の一環として刊行し、歌舞伎の技芸の継承の一助とする。

(4) 伝統的な歌舞伎を普及させるための事業

毎年の夏休みに実施してきた「小学生のための歌舞伎体験教室」は、昨年度はコロナウイルス感染拡大防止のために実施できなかった。令和3年度はまだコロナ禍が収束するか、予断を許さない状況であるが、可能であれば実施する方向で準備をすすめる。
対象は、公募による首都圏の小学生(4,5,6年生)希望者とし、プログラムは参加児童が歌舞伎の楽しさと伝統芸術としての魅力を体験できるよう、従来の内容を継承しながら、一部見直して作成する。具体内容は、国立劇場の大稽古場などを借りての結髪の見学や義太夫の体験、立廻りにふれる等のプログラムと並行して、『白浪五人男-稲瀬川勢揃いの場』の本読みから実技までの体験を行い、最後日に国立劇場小劇場で発表会を行う。
(独)日本芸術文化振興会(国立劇場)の協賛、松竹株式会社と(公社)日本俳優協会の協力を要請する。

(5) 「かぶき手帖」2022年版の刊行

コロナ禍により『かぶき手帖2021年版』は刊行できなかったが、『2022年版』は日本俳優協会、松竹(株)との共同出版事業として、2022年1月2日発行をめざして準備を進める。

(6) ホームページのリニューアル

本保存会のホームページは平成15年(2003年)に改修してすでに18年経過し、プログラムが古くなり管理更新にも手間がかかり、セキュリティ上も問題があるのでリニューアルにとりかかる。併せて、コロナ禍により「小学生のための歌舞伎体験教室」や「研修発表会」が開催できなかったことを踏まえて、インターネットを使った普及啓蒙や情報発信の可能性についても検討していく。